じこかんていどっとこむ

速度の言い掛かり

 速度(運動エネルギー)と高さ(位置エネルギー)の関係

 交通事故訴訟では、「衝突直前に時速○○kmで走行していた。」と、身に覚えの無い速度で走行していた事を相手側から主張される事があります。
 その際、まず『速度(km/h)』を『高さ(m)』に換算してみてください。
 私の場合、保険会社側から『時速73.8kmで走行していた!』と言われました。
 速度を高さに換算する式は、 です。

h=vv/2g

 つまり、『時速73.8kmでの衝突』は『21.44m上空からの落下に等しい』と言えるのです。
 上図の73.8の個所に時速の値を入れれば、高さh(m)に換算する事ができます。

 【自動計算用のフォーム】
 速度(km/h)での衝突は、高さ(m)上空からの落下に等しい。
 (ビルの階〜階の高さに相当。 ※1階:3〜3.5m)
 上の枠内に半角で『時速(km/h)』を入力すると『高さ(m)』に変換されます。
 速度に対するエネルギーの大きさを感覚的に掴んでおくと、相手側の嘘や間違いに騙され難くなります。
 ですので、極力自動計算フォームは使わずに『自力で計算』して、力をつけてください。

 数式を実例に当てはめて…

 私のバイクは衝突後その場で停止しました。(横滑り等で運動エネルギーが外部に移りません)
 よって、『(バイク+人間で)重さが350kgを超える物体が、21.44m上空から落下した莫大なエネルギー』を受け止めた(全て消費した)事を証明しなければならないのです。
 ところが…残された損傷は、『加害者車両のスライドドアの破損』と『バイクのフロント部分の破損』くらいです。(実際、バイクのフロント部分の破損はイカサマでしたが…。)


 上図の破損程度では、21.44(m)上空からの落下エネルギーはとても吸収しきれません。

 事故当時、私は時速40km以下で走行していました。(間違いありません)
 現場は夕方の帰宅ラッシュ中の道路です。 根本的に『速度を出す事は困難』なのです。
 私も最初から路肩を走行する事はせず、『道の真ん中を走行』していました。
 保険会社側の主張する原告バイクの速度「時速73.8km」は、何の根拠も無い非常に大きな値なのです。

 相手側の主張する『時速○○km』だけでは事故の状況は想像し難いと思います。
 一度、高さに換算して『○○m上空からの落下』として、事故後の破損を眺めてみてください。
 その時、何か違和感を感じたら…そこに問題が潜んでいるかもしれません。

 ※もっと詳細を知りたい人は、過去にこの場所にアップしていたHP『私自ら出るっ!』の『速度の言い掛かり』をご参照ください。


観察: 本当に73.8km/hのバイクが衝突した際の傷跡か?(加害者車両スライドドアの破損とバイクのフロントの破損では『消費できる運動エネルギーが小さすぎる』のではないか?)
仮説: 保険会社側は被害者のバイクの速度を73.8(km/h)だと言っているが、本当はもっと低い速度での衝突だったのではないか?
検証: 『速さ(運動エネルギー)』を『高さ(位置エネルギー)』に変換してみる。
73.8(km/h)
の運動エネルギー = 21.44(m)からの落下に相当。
40(km/h)の運動エネルギー = 6.29(m)からの落下に相当。
考察: 重さ350kgの物体が落下して衝突した際の衝撃を考えると、21.44(m)と言うのはあまりにも大き過ぎる値であり、エネルギー的にも説明がつかない。(∴73.8(km/h)は不適切な値)
6.29(m)(建物の3Fの高さに相当)からの落下の衝撃と考えても、まだエネルギーが余る程だが、21.44(m)の落下と比べれば格段に現実的な値だと言える。
 エネルギーは速度の2乗ずつ増加するので、その性質を理解して速度値を考察する必要があります。
 『速度』を『高さ』に変換するとエネルギーを想像しやすい傾向があるので、確認する事をおすすめします。


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