じこかんていどっとこむ

角度の言い掛かり

 衝突角度と旋回半径の関係

 『1、旋回を開始した地点 2、衝突地点 3、衝突時の角度』
以上の3つが分かると、描ける円は1つに限定されます。
 つまり以上の3点から、旋回時の回転半径(旋回半径)を(概算で)算出できます。

R=cd/(1-cosθ)

現場図

 旋回開始地点から衝突地点までのX軸方向の距離(線分cd)と衝突角度θが分かれば、上図の式
 R=cd÷(1-cosθ)に値を代入する事で、おおよその値が算出できます。
 私の事故ではcd=3.32(m)でした。
 保険会社側は、「衝突角度は25°」と言ってきました。
 算出すると分かるのですが、R=35.4351754…(m)になります。
 旋回半径35.4(m)とは…一体、どこに向かって走るつもりなのでしょう?

 中には、「途中からハンドルをきつく切った!」と事を言う人が居ますが…『その様なハンドル操作をした際にどの様な挙動になるのか?』、一度体験をされると良いでしょう。

 実際に体験されれば、『行わない運転である』事は理解して貰えると思います。
 (詳細はQ&Aの『旋回運動は楕円軌道でも可能ではないか?』をご参照ください。)
 旋回運動は「序盤にきつくハンドルを切る運転」も考えられますが、一歩譲って、通常『円運動』で旋回した物として仮定を行います。

 『浅い衝突角度』と『深い衝突角度』との違い

 そもそも、どうして保険会社側は『浅い衝突角度』を主張しなければならなかったのでしょうか?

『衝突角度が深い場合』・『衝突角度が浅い場合』

 加害者車両のスライドドアが開く形で破損する為には、
  ・ 深い角度の衝突の場合には加害者車両が高速だった。
  ・ 浅い角度の衝突の場合には被害者車両が高速だった。
この様に、『どちらか一方の事故の責任が重くなる状況』が考えられます。
(※当然、エネルギー的には『両者とも中速だった』という状況も考えられます。)
 保険会社側は、被害者側に事故の責任を認めさせる為に『被害者バイクは高速であった』と主張した上に、『加害者車両は低速であった』と、加害者に責任が無い事を強調してきたのです。
 同時に、バイクが高速である『浅い角度での衝突』を主張せざるを得なかったと思われます。
 ただ、、非常に残念な事に、保険会社側は被害者バイクのに『速度』だけ注目が行ってしまい、『主張する浅い衝突角度が実際の現場では再現不可能である』事にまでは気が回らなかったのです。
(この『浅すぎる衝突角度』への指摘に対し、訂正や謝罪は一切行われませんでした。)

 『言論の自由』です。ペナルティーは有りません。

 『その道のプロが間違いを犯す事。』 これは私の事故に限った話ではありません。
 裁判に矛盾はつきものです。
 実際の現場の状況で考察すると障害物にぶつかってしまう…なんて鑑定が書かれているケースが、世の中には多数存在しています。
 逆に、『自己矛盾を持たない鑑定書面の方がレア』かもしれません。
 だからこそ、『裁判の結果を左右する値(速度値など)に大きく影響を与える様な間違いが無いか?』を注意深く観察する必要があるのです。
 交通事故の鑑定上、衝突角度も重要な値です。
 他の障害物に当たらないか?道路上をきちんと走れるか?速度との関係に問題は無いか?など、現場に当てはめても再現が可能な事を、自分の鑑定に対しても、相手側の鑑定に対しても必ず確認する様にしてください。

 ※もっと詳細を知りたい人は、過去にこの場所にアップしていたHP『私自ら出るっ!』の『角度の言い掛かり』をご参照ください。


観察: 浅い衝突角度での再現は可能か?(曲り切れないのでは?) そもそも25°と言う浅い角度で、対向車線のど真ん中で存在する様な運転を行うだろうか?
仮説: 浅い衝突角度では加害者車両は曲り切れず、右折運動中に駐車場内外の障害物に衝突するのではないか?
検証: 衝突角度(θ)と右折開始地点から衝突地点までのX軸方向の距離(cd)が決まると、その条件で描く事のできる円は1つに限定される。
考察: 浅い角度での衝突は事故現場では再現不可能。 この矛盾の発見により、『被害者バイクの高速状態と、加害者車両の低速状態』は間違いである可能性が高い。 また、スライドドアが開く形で破損した原因は、加害者車両の運動(速度)の影響とも考えらえれる。
 「曲がりきれない旋回運動を仮定するなんて、そんなバカな!?」と思うかもしれませんが、裁判に出される鑑定書面の中には実現が困難な事柄も含まれる事が有るのです。
 決して他人事だと思わないでください。


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